「インド人はすぐ辞める」は本当か?  

 

インド人の定着率をアップさせる4つのポイント

今日、外国人材の活用はどの業種でも広がり、在日外国人数は増加傾向にあります。しかし、外国人材を採用した企業の中から、「外国人はすぐ転職してしまう」、と言う悩みの声が聞こえてくることも。

 リクルートのGlobal career servey(2013)がアジアを中心とする9カ国を対象とした転職回数に関する調査を見ると、20代で転職を1回経験した割合は、各国それ程大きな違いはありませんが、2回以上転職した割合を見ると、日本は9カ国の中で一番少なくなっています。世界から見ると、「日本人はあまり転職しない」と思われるのですが、日本側からすると逆に「外国人はすぐ辞める」という話につながるのかもしれません。

 では、なぜインド人は転職に積極的なのでしょうか?どうすれば離職を避ける事が出来るのか、その解決に役立つ5つのポイントをインド人の価値観や習慣から考えてみたいと思います。 

 出典:リクルート GLOBAL CAREER SERVEY (2013) 

https://www.works-i.com/research/works-report/item/s_000242.pdf

 

「転職すれば給料が上がる」がアジアの常識

インド人の離職理由は様々ですが、インド人はより高い賃金を求めて転職する傾向があります。これは、インド人が自分のスキルアップに熱心な事や、アジアでは「転職すれば給料が上がる」という考えが浸透している事と関係しています。

ではここで、右のグラフを見てみましょう。これは、転職回数の違いにより現在管理職である確率が違うのかを検証したもので、転職1回、2回、3回以上経験者が管理職である確率が、転職未経験者と比べて違うかが分析されています。統計的差異が認められる有意差がある場合のみ、その違いを表す数字(=オッズ比)を表示し、この数字が1よりも大きくなる場合は管理職である確率が増え、逆に1より小さいほど減ります。 

これをみると、日本では転職すると昇進しにくくなるものの、逆にインドをはじめアジア諸国では、転職はチャンスになると言う事が分かります。日本は終身雇用制度が定着している事もあり、「我慢が足りない」と転職にネガティブな印象を持ちがちですが、実は世界からすれば日本が特殊とも言えます。 

また前章で取り上げた、転職回数のグラフを見てみると、30代で転職する割合が一番多いのは日本人女性となっており、必ずしも「外国人はすぐ辞める」とは言い切れません。 

では、優秀なインド人材により長く働いてもらうために、日本側はどのようなことに留意する必要があるでしょうか?

出典:リクルート GLOBAL CAREER SERVEY (2013)

https://www.works-i.com/research/works-report/item/s_000242.pdf

インド人のスペシャリスト志向を理解しよう

インド人が日本で働いて戸惑う事の1つに、専門以外の業務や、掃除やお茶汲みなどの雑用を任される事が挙げられます。

働き方の姿勢として、日本人は様々な業務を経験し幅を広げる事に柔軟ですが、インド人、特にIT技術者はスペシャリストとして専門性を高めることを重視します。というのも、インド人ITエンジニアの8割以上が情報系や工学系の理系出身で、エンジニアになる事ために学生時代から研鑽を積んでいます。中には、「新人はまず雑用から」と、花見の場所取りや宴会の幹事などをさせる所もあるかもしれませんが、インド人の中には、その様な会社ではスキルアップできないと考え、離職につながる事もあるのです。

加えてもう1つ、インド人が周辺業務や雑用をする事に戸惑う理由があります。インドでは職業が日本以上に細分化されており、例えばITエンジニアは、ITエンジニアの仕事のみする事が一般的です。多くのオフィスでは掃除・お茶汲み・荷物運搬などの雑用はオフィスボーイが、コピーやホチキス留めなど周辺業務はステイショナリーボーイが行うため、エンジニアは自分の業務だけに集中できます。もしITエンジニアが雑用をしてしまうと、それは彼らの仕事を奪う事に繋がるため、むしろ「雑用はするべきではない」という事になるのです。

 インドと日本では習慣が違いますが、日本では基本的に自分のことは自分でする事、オフィスを清潔に保つために雑用をする可能性がある事を日本の文化として理解してもらい、インド人スタッフが専門外の業務をどの程度受け入れられるかも話し合っておくとよいでしょう。

キャリアパスを考えた業務を与える

どの職種でも皆キャリアアップを考えるものですが、インド人は専門性を重視するため、特にその意識が強い傾向にあります。故に、優秀なインド人に出来るだけ長く働いてもらうためには、その人のキャリアパスを考えた業務を与えながら、そこで出来る限り自己実現できるよう支援する事も重要になってきます。 では具体的にどうすればいいのでしょうか?

例えば、ITエンジニアといえばプログラマーの仕事を真っ先に思い浮かべますが、プログラマーとしてある程度経験を積んだ後、上流工程に携われるSE、その後はプロジェクトマネージャーへ進む道が1つの可能性として存在します。 プロジェクトマネージャーは、SEとしての開発や設計経験に加え、顧客のヒアリングをしたりチームをまとめたりするためのコミュニケーション能力、スケジュールやコストの管理能力が求められます。 もし、インド人スタッフが、このようなキャリアパスを描いている場合は、顧客とのミーティングに同席させる、新人研修やマネジメント業務を経験させる、日本語教育やマナー研修を充実させるなど、その人のキャリアパスを尊重した支援が必要です。

今日、ITエンジニアのキャリアパスは多様化し、オフショア開発で2カ国の調整役をするブリッジエンジニア、企業のIT戦略の策定やシステムの見直し、新システム導入の提案、システムの最適化・動作検証などを行うITコンサルタント、ビッグデータを分析し企業が取るべき次のアクションを提案するデータサイエンティストなど、様々な選択肢があります。数年で離職してしまうイメージを持たれがちな外国人ですが、実は上手くマッチングすれば、10年以上働き、永住権を取得する人もいます。モチベーションを維持させられる様に彼らを育てていくのは、企業側の腕の見せ所ですが、これはインド人に限らず日本人スタッフにも当てはまる事なので、そう難しくはないのではないでしょうか。

 

宗教への理解を

インドは多宗教国家で、ヒンズー教 8 0 . 5 % 、イ ス ラ ム 教13.4%、キ リ ス ト 教2.3%、 シーク教1.9%、仏教0.8%、ジャイナ教0.4%(2001年)と言うように、多様な価値観であふれており、それらに配慮する事も重要です。 

 例えばヒンズー教徒は、牛は神聖な動物であるため、食べることができません。またベジタリアンやお酒も飲まない人も多いです。 

イスラム教は、豚肉と酒を口にしません。羊や牛は食べる事ができますが、ハラールと言う決められた作法で処理された物のみ食べる事が許されています。ラマダンと呼ばれる断食期間には、日中、水を含めて食事をせず、日没とともにたくさんの食事を摂取します。  

ほとんどの日本人にはピンとこないかもしれませんが、彼らにはとても大きな問題です。ちなみに、弊社インド人スタッフはベジタリアンのヒンズー教徒ですが、「宗教が自身の生活のベースになっている」と話しており、日本でもヒンズー教の教えを守っています。 

 しかし、日本のレストランでベジタリアン対応している所はそれほど多くなく、日本食には鰹出汁節が使われているため、外食の際に困る事があるそうです。ですので、インド人スタッフと食事する際は、相手の食生活に寄り添い、一緒に楽しめる方法を協力して作り上げる姿勢が大切になっていきます。

画像:聖地・ヴァーラーナシーで沐浴するヒンズー教徒 https://en.wikipedia.org/wiki/Varanasi

 

休暇も柔軟に

インド人は家族をとても大切にします。また慣れない環境でホームシックにかかる事もあり、せめて年に一回は長めに休暇を取りたい、母国の休日に合わせて休暇を取りたいと希望する人もいるでしょう。その際、どれだけその気持ちに寄り添い柔軟になるかもインド人定着率に大きく関わってきます。

では、インド人が休暇を取りたいと思う日はいつでしょうか? まず考えられるのが、結婚式です。結婚はインド人にとって大変大きな意味を持つため、自身の式はもちろん、家族の結婚式の時も長期休暇を希望する人が出てくるかもしれません。

というのも、インドの結婚式は前後に様々な宗教的儀式があり、少なくとも3日、中には1週間以上かける人もいます。とても長いように感じますが、これでもかなり省略してあり、正式にやると1ヶ月かかります。インドでは一昔前の日本のように、結婚は家同士のものという意味合いが強く、両家の結びつきが始まる重要な日です。式の参加者は千人を越える事も珍しくなく盛大に行われます。

結婚式の他に、10月から11月の間にあるディワリというヒンズー教のお正月もインドでは大切な日です。この期間は家族と過ごすため、インドは帰省ラッシュで大混雑するとか。

行事が簡素化し、人との繋がりが希薄になりがちな日本では考えられない事ですが、彼らが宗教や家族を大切にする気持ちを理解し、例えばリモートワークを取り入れ長期帰省を許可するなど、柔軟に対応することも重要です。

出典:Hindu Wedding https://en.wikipedia.org/wiki/Hindu_wedding#/media/File:Ring_ceremony,_Indian_Hindu_wedding.jpg

以上のように、インド人の定着率を上げるには、丁寧にコミュニケーションを取りお互いの理解を深める事。日本サイドが頼れる存在になる事が不可欠です。

また、また会社が自分に対して、給与やポジション面で公平だと感じられることも重要です。というのも、残念ながらインドはまだ貧しい国というイメージがあり、インド人を「安く使える労働者」という見る人も少なからずいるのです。逆に、高スキルのインド人だからと言って「お客さん扱い」するのも居心地が悪く感じるのでしまうので、日本人と同様、平等に接する姿勢が大切です。

初めてインド人を受け入れる際は何かと戸惑いがあるかもしれませんが、企業側のこのような姿勢は、外国人労働者に限らず全ての労働者が安心して働き、多様な21世紀を生き抜くために欠かせない要素でしょう。

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