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加速するソフトバンクのインド投資

2020-01-31 15:45:33

加速するソフトバンクのインド投資

現在、世界には5000ものベンチャーキャピタル(以下VC)があると言われており、多くの若き企業家達が調達した資金で夢を叶え、社会に変革をもたらしています。

一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(東京都千代田区)によると、日本のVCの投資額は年々増加しており、2018年度のベンチャーキャピタル(VC)による投資額は前年度比36.9%増の2706億円。4年連続の増加との報告がありました。

主な投資分野はIT分野で、2016年の投資注力分野はヘルステック、フィンテック、ロボット、AIとなっています。 

数あるVCの中でも、ソフトバンクが2017年に設立した「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は、IT分野への資金の出し手として世界中で注目を集めています。
このファンドの特徴は「ユニコーンハンティング」、つまり、これまでVCがアーリーステージの企業に投資していたのに対し、同ファンドはレイトステージの既にユニコーンになった企業に特化して投資しています。
 ソフトバンク社長孫正義氏も、「ユニコーン企業ということは、その分野の世界No.1、少なくともその地域のNo.1です。しかもNo.1だからこそシナジーを生み出しやすい。」と19年の基調講演でも語っており、同ファンドは10兆円規模の資金力を強みに出資しています。

ソフトバンクはインドのスタートアップにも積極的に投資を行っていますが、今回は同ファンドの投資先であり、IT技術でインド社会に大きな変革をもたらしている注目の企業についてレポート致します。

Ola(オラ)

オラはインドNo1の配車アプリ・ライドシェアアプリサービスを提供しています。創業当初よりソフトバンクとは密接な関係を築いており、2019年7月には新事業の電気自動車開発に2億5000万ドル調達しました。

大気汚染が深刻なインドは、2020年4月より新環境基準「バーラト6」が施行されます。年々、世界の環境基準は厳格化しており、今後の自動車は電気自動車を始めとするエコカーにシフトしていくことは間違いありません。

更に、インドは2027年頃には中国を抜き人口世界一になることが予想されており、今後の自動車市場の拡大が期待されています。写真右:https://www.mission-electric.in

OYO(オヨ)

2018年、同ファンドは、リテシュ・アガーウォール氏が弱冠19歳で立ち上げた格安ホテルサービス会社Oyoに10億ドルの投資を主導しました。

Oyoの特徴は、IT技術を駆使した効率的な経営にあります。例えば、地域の宿泊需給データをAIで分析、アルゴリズムで最適な家具を選定。契約したオーナーにはホテル管理アプリを提供し、家族経営や地方の小さなホテルでも効率よく経営できるようサポートしています。

Oyoがフランチャイズ化した客室は、どこでも一定の質が保証されていると評判を呼び、創業6年で室数は世界第1位のマリオットに続いて2位となりました。写真右:Softbank World 2019 基調講演にて(右側 オヨCEO アガーウォール氏

Paytm(ペイティーエム)

日本でも話題になったキャッシュレス決済サービスPayPay(ペイペイ)に技術提供しているPaytmは、インド最大の決済サービスです。QRコード決済、ECでの買い物や公共料金支払いなどに対応しています。

2016年11月にモディ首相が500ルピー紙幣と1000ルピー紙幣を突如廃止したことをきっかけに存在感を高めました。ソフトバンクは2017年に、Paytmに14億ドル出資しています。

出典:https://www.facebook.com/pg/paypay.official/photos/?ref=page_internal

InMobi(インモビ)

InMobiは2007年に、インド最難関・インド工科大学(通称IIT)出身のナビーン・テワリ氏によって設立されました。InMobiはインド発のグローバルテック企業として評価を受け、ユニコーン企業(時価総額1000億円超の未上場スタートアップ)としてモバイル広告ネットワークを運営しています。

現在では、2010年に進出した日本を含め、世界200か国をカバーし、月間広告インプレッション数は1,261億にのぼります(2019年2月現在・数値はInMobi公式サイトより)。

2011年11月には、ソフトバンクより2億ドル調達しますが、この額はインドのモバイルインターネット企業に対する1回の出資としては最大額です。インモビによると既にアジアにおいては最大の広告ネットワークとなっており、世界でもグーグルのAdMobに次ぐ第2位になっととの事です。

グローファーズ

2013年創業のグローファーズは、アプリで注文を受け、食料品・生活雑貨・花・ペットフードなどをあらゆるものを消費者に届けるサービスを提供しています。

特徴は倉庫を持たず、提携先のスーパーなどの実店舗から商品をピックアップする所です。顧客に最も近い店舗から商品を運ぶことができるため、配送時間を90分以内と大幅に短縮することができます。

インドの食料品店は家族経営の小規模な形態が多いため品揃えが悪く、店をはしごしなければならなかったり、交通事情が悪く買い出しが大変であったりします。この問題を解決する1つの手段として、グローファーズは大きな成長余地があると期待されおり、2019年5月15日、ソフトバンクから2億ドル(約220億円)超の出資が決定しました。

出典:https://grofers.com/blog/the-grocery-leap-forward/

 

ファーストクライ

「FirstCry」は2010年、インド西部の学術都市プネーで創業されました。創業者はSupam Maheshwari氏とAmitava Saha氏で、同社は2013年に「マヒンドラ・グループ」のベビーケア用品「Babyoye」を買収し、同分野ではアジア最大級の企業となりました。

 同社は2019年1月にソフトバンクから4億ドル(約438億円)の資金調達に成功し、これにより現在の評価額は8億5000万ドル(約931億円)に達しています。

 FirstCryはオンライン販売のほか、インド125都市で400以上の実店舗を展開。更に、月間1300万のユーザー数を誇る子育てコミュニティ「FirstCry Parenting」の運営、知育玩具キット販売など小売以外に子育て分野に幅広く展開しています。

 更に2019年11月、同社は保育フランチャイズ事業の「Oi Playschool」を買収し、保育分野にも進出する事を発表しました。2010年に創業した「Oi Playschool」は、ハイデラバードやバンガロールで55の保育所を運営していますが、今後5年間で1000以上の保育施設をインド全土に展開する予定です。

 インドでは毎年2500万人の赤ちゃんが誕生していると言われ、2027年頃には人口世界一になると予測されています。人口増加に加えて、中間層の台頭や女性の社会進出などで、乳幼児の教育・保育へのニーズは今後高まっていくでしょう。

 写真出典:https://www.facebook.com/pg/FirstCryIndia/photos/?ref=page_internal 

 

Lenskart(レンズカート)

Lenskartは、オムニチャネル(店舗やイベント、ネットやモバイルなどのチャネルを問わず、あらゆる場所で消費者と接点をもとうとする戦略)でメガネなどを販売する会社で、2010年に元マイクロソフトのプログラムマネージャーのPeyush Bansalによって設立されました。

 2019年9月時点でインド70都市に500を超える店舗を構えており、19年12月20日、事業拡大に向けソフトバンクビジョンファンドから新ラウンドで2億7500万ドル(約300億円)を調達しました。ビジョンファンドの投資で、Lenskartの資金調達額は累計4億5600万ドル(約500億円)となり、新ラウンドでLenskartのバリュエーションは15億ドル(約1600億円)を超えました。

 世界最大の眼鏡メーカーによると、インドでは視力が悪いことによって年間370億ドルもの損失が出ていると報告しています。またWHOもインドではメガネを必要とする人が5億5千万人いるにも関わらず、適切な視力矯正がなされておらず、特に子どもの近眼は深刻な問題として懸念しています。しかし近年、中間層の台頭と共に、眼鏡市場が拡大することが予想されています。

現在、同社の売上の6割がオンライン販売によるものですが、同社は店舗での無料の視力検査を行っており、医療に乏しい小さな村でも眼鏡が普及する事が期待されています。その他にも、メガネを自宅で試着してから購入を決められたり、ウェブサイト上で、3D AIを使ってメガネをかけた姿をシミュレーションする事ができたりと、消費者にとって魅力的なサービスを提供しシェアを伸ばしています。

 写真出典:https://www.facebook.com/pg/Lenskartindia/photos/?tab=album&album_id=120281898034464&ref=page_internal

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