インド、EV自動車普及への取り組みが本格化

急速な経済発展で今や中国よりも大気汚染が深刻化していると言われるインドですが、WHOによると毎年700万人が大気汚染で死亡しているということです。2019年4月に再選を果たしたばかりのモディ首相は、前政権時代に「クリーンインディア政策」を打ち出し、インドの衛生環境解決を試みていますが、その一環として、国を挙げてEV自動車(電気自動車)普及に力を入れています。また、民間もEV自動車やバッテリー開発を進め、その分野への投資も活発になっています。

EV車普及へ向けた政府の対策

< 政府の支援 >  

政府は2019年4月からEV車購入の助成金の増額を発表しています。対象は三輪や四輪だけでなく、個人向けの二輪車も含みますが、ここがとてもインドらしい所。 経済発展でインドの貧困層は減りつつありますが、全世帯の8割が年間所得額20万ルピー(約30万円)未満の低所得者層。四輪のEV自動車を持つことが難しい一般市民にとって、より安価な二輪が普段の足となっています。インドの二輪販売社数は年間2000万台以上。世界にある二輪の3分の1がインドにあると言われるくらい生活に不可欠ですが、この決定で電気二輪市場が更に拡大すると予測されます。 政府は他にも、充電スタンド設置への助成金や、自動車メーカーがEV車をテスト販売する際の要件もなくすなど規制緩和を決定し、普及を後押ししています。

写真出典: https://qz.com/india/1208204/india-survey-shows-distracted-drivers-using-phones-pedestrians-taking-selfies-crossing-road/

 

<ディーゼル車への様々な規制>

  インド政府は、EV自動車普及への支援と同時に、大型ディ ーゼル車への登録禁止など様々な規制をしてきました。インド自動車工業会(SIAM)によると、自動車販売台数全体のうちディーゼル車の割合は、2011年5月の52%から2016年5月には26%へ減少しています。この状況を受け、ルノーとマルチ・スズキ(インド自動車最大手でスズキの子会社)は20年4月以降、同国でのディーゼル車の製造中止を発表。現地大手タタ自動車も一部ディーゼル車の販売を終了すると伝えられており、自動車業界の流れが変化しています。

  更に20年4月1日、強化された排ガス基準「バーラト・ステージ(BS)6」が全土で導入される予定。「バーラトステージ6」は、20年にEUに導入される排ガス規制「ユーロ5」に相当する厳しさの規制で、自動車だけでなく燃料も規制の対象となっています。基準を満たした燃料の導入により、排ガス に含まれる硫黄分の量は1/5に減少すると見込まれています。また同日より、これに適合しない車両の販売は禁止となります。

日本企業もEV事業へ参入

政府の積極的な政策により、インドのEV市場は2035年には37万台に達するとの予測されており(2019年8月富士経済による)、これを日本企業も商機と考え、EV事業への投資や、EV商品開発が活発になっています。

<ソフトバンク> 

ソフトバンクはこれまで100億ドル(1兆1000億円)以上インドに投資してきましたが、特にOlaとは親密な関係を築いています。 Olaはライドシェア・タクシー配車アプリサービスで急成長している企業で、インドで最も注目すべきスタートアップの一つとして注目を集めています。インドでは三輪タクシー(リキシャ)は庶民の足と言われるほど普及していまが、このアプリを使えば、必要な時にすぐ呼べます。また、現在地から目的地までの料金が自動で算出され料金トラブルが回避できるため、地元住民はもちろん旅行者の間でも重宝されています。 Olaはここ数年、EV自動車事業にも乗り出し、2019年7月にはソフトバンクから2億5000万ドル(約270億円)を調達し、EV自動車事業への投資を見据えています。現在、充電情報システム・充電インフラシステム・急速充電システムなどEV向けのソリューションも構築中で、数年内に100万台のEV自動車を投入する計画を明らかにしています。

写真:インドのスタートアップOlaと創設者のBhavish Aggarwal氏 (出典:https://yourstory.com/2019/07/ola-electric-vehicle-india-ev-unicorn-softbank )

<三井物産> 

三井物産は、電動三輪タクシーによるライドシェアを運営するトレジャー・ベース・ベンチャーズに約15億円出資すると決定。同社はSmartE(スマート・イー)というライドシェアサービスを提供。これは、デリー・メトロ駅を出発点とし、同じ方向に向かう人同士で相乗りするという新しいスタイルのサービスです。

デリー・メトロ駅はデリー及びその近郊に路線網を持っており、一日の利用人数は470万人。今後はインド各地の主要駅に拠点を置き、2023年までに現在の60倍超の5万台を導入する予定です。価格は初乗り2キロメートルを10ルピー(約15円)と安く設定されているため、庶民の新しい足として定着していくでしょう。

世界中がEV化義務化への法整備を進めている中、インドも同じ流れになっています。海外から資金を調達し、その流れを自国のテクノロジーで作り上げ、どんどん成長をしていく様子から今後も目を離せません。

<ホンダ>

2019年6月、ホンダは2020年4月に導入される新環境基準に対応したスクーター「アクティバ125」を発表しました。

アクティバ125のベースとなったアクティバシリーズは、インド人の価値観に寄り添った開発がなされ、インドで大ヒットした商品です。例えば多くのメーカーがボディをプラスチックにする中、インド人好みの金属を使用。価格も現地メーカーに合わせた所、2017年販売数は311万台。現在では、インド市場を代表するモデルとなり、ホンダの二輪事業を支える主力商品となっています。

 価格は「現行車より10~15%高くなる見通し」だが、従来モデルより燃費効率が10%向上するため、燃料費を節約できるという。 

写真:https://response.jp/article/2019/06/13/323393.html

 

<トヨタ>

  トヨタ自動車の寺師茂樹副社長は2019年10月22日、都内で開かれたイベントで、スズキと小型のEV車を開発し、なるべく早い時期でのインド販売を目指すとの発表がありました。ヨーロッパを始めとする世界の環境基準は年々厳しくなっており、同社のプリウスでも満たさなくなるため、同社はEVや燃料電池車を開発、販売していくと発表しています。

 

20年4月から施行される「バーラト・ステージ6」は世界的に見ても厳しい排ガス規制となっており、未対応の二輪車は販売ができなくなるため各社は対応を迫られています。ケーヒン、日本特殊陶業、愛三工業などの日系の部品メーカーも排ガス規制強化対応製品のインドでの生産を発表しており、自動車産業全体が大転換期に差し掛かっていますが、地場メーカーが厳しい基準に対応するのが難しい状況であるため、開発力のある日本にとっては逆に大きなチャンスとなる事が予測されます。

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