インドのマイナンバー制度「アダール」とは?

IT人材が豊富である一方、牛が道路をゆっくり歩いている姿やガンジス川のイメーシで最先端と古さが同居している印象を持たれるインドで、日本よりも先に「アダール」というIT技術を駆使したマイナンバー制が始まっていたことはご存知でしょうか?

今回は加入率99%。国民のほとんどが登録し、今はインド生活に不可欠なアダールについてご紹介します。

アダールはインド生活の基礎

アダールは、全国民を対象に12桁の数字を発行し、個別のIDを与え識別する国民識別番号制度です。登録は任意です。

アダールという言葉はヒンディー語で「基礎」「土台」を意味します。この言葉からも分かるように、アダールはインド人の生活を支える基礎となっています。

 大きな特徴は、高度なIT技術を駆使した生体認証を採用している所です。名前、住所、性別、生年月日に加え、国民一人一人の顔・両手の全ての指紋・目の虹彩をデータ化し、それらを用いて本人認証を行います。

 アダールは2010年に登録申請が開始されていますが、20177月の時点ではインド人口の99%以上、116000万人が登録済みであるとの報告が出ています。

アダールがもたらしたメリットとは

アダール登録は任意なのにもかかわらず、ほとんどの人が利用しています。それは、これまでのインドには戸籍が整備されておらず、本人確認が難しいという状況があるためです。

日本では想像しにくい事ですが、戸籍制度がないせいで、インドでは様々は弊害が生じていました。例えば、政府は貧困層へ食料や肥料の配給など様々な福祉サービスを与えていましたが、本人確認システムが構築されていなかったため、なりすましや横領などの不正受給が横行し、本当に必要な人に支援が行き届かない事態が頻発していました。

また、個人を証明する手立てがないため、銀行口座開設、送金、携帯電話の購入もできません。そうなると経済活動に参加しにくく、貧困から抜け出す事ができないという悪循環もありました。しかし、アダールに個人情報が登録・情報の電子化がされると、様々なメリットが市民の生活にもたらされました。

例えば…、

  • 今まで行政が取りこぼしていた教育・福祉手当がきちんと支払われるように(食料配給、災害義援金、奨学金など)
  • 不正が防止され、政府の出費が70億ドル近く節約。
  • 文字の読み書きができない人も、容易に行政サービス申請ができるように
  • 信用度が上がり、学校に入りやすくなる。
  • 銀行口座の開設・融資・送金が早く簡単に→起業が容易に
  • モバイル決済を行えるようになる。
  • 携帯電話の利用率はそれ以前に比べて倍増し、人口の79%に。
  • 金融機関を利用している女性の割合が27%増加→女性の経済活動が活発になり、地位向上につながる。

 

このように、アダールは教育・福祉・経済など様々な面でのメリットがあり、貧困層だけでなくあらゆる層の人々の生活を変えているという事がわかります。

当初は貧困層向けの支援目的でスタートしたプロジェクトでしたが、今では納税申告書の提出など100以上の行政サービス、SIMカードの購入、銀行取引、土地購入、オンラインでのチケット購入など民間のあらゆるサービスでアダールIDが必要となっています。

182日間を超えてインドに住んでいれば、外国人でもID取得できるため、留学やビジネスで長期滞在される方にとっても必須アイテムとなっています。

 

アダール普及にNECの貢献

今やインド生活になくてはならないアダールですが、実は日本のNECがこのシステムを支えているのをご存知でしょうか? 

アダール登録は、ピーク時には1日200万件もの登録情報を処理することもあり、処理スピードが求められます。 更には個人情報を守るための安全性、なりすましや二重登録を防ぐための高い精度も必須であり、運用には非常に高度な技術力が求められます。 

 そこでインド政府は、技術力で定評のあるNECのシステムを採用しました。 実は、NECの生体認証技術への取り組みは古く、指紋認証は約半世紀も前から研究が進められてきました。 米国国立標準技術研究所(NIST)が実施した指紋認証技術と顔認証技術のテストでも「照合精度世界1位」と高い評価を得ており、既に70カ国以上で700システムが採用。世界の50の空港でもNECの生体認証が実際に使われています。 

 更には、犯罪捜査にも大活躍しており、例えば米国カリフォルニア州のロサンゼルスでは、稼働後の1週間で迷宮入り事件2件を含む107件の事件解決に貢献。アルゼンチンのブエノスアイレス州ティグレ市においても、システム導入開始の2008年から2013年までで、月100台もあった車両盗難は8割減少、主要産業の観光業の収入も3倍に増加したとのことです。

 

このように、日本の技術力が認められ、インド国民に安全な社会と平等なサービスが提供されることは大変喜ばしいことです。

2019年5月の選挙で圧勝したモディ首相は、グジャラート州知事時代から安倍首相とは友好関係を築いており、日印首脳会談や別荘外交などで交流を深めてきました。こうした積極的なアプローチが実を結び、モディ首相の地元アーメダバード・ムンバイ間で日本の新幹線導入が決定。他にも、様々な経済や文化協定も結ばれています。

既に、インドに進出する日本企業は1000社以上、10年で約3倍に増加している事からも、官民問わず様々な分野で日印の協力関係がより強化される事に期待が寄せられます。

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