「2019年〜2020年のインド経済状況」

19年は停滞も、日系5割が20年は回復と回答

2014年よりモディ政権が発足して以降、インド経済は順調に成長し、2018年4〜6月(第1四半期)にはGDP成長率8%ありました。

 しかし、2019年後半の現在では停滞。インド統計・計画実施省の発表によると、19年度第1四半期(4~6月)の実質GDP成長率(2011年基準)推計値を前年同期比5.0%。これは2013年以来6年ぶりの低水準となります。

 しかしながら日系企業の5割が20年は利益回復とアンケートで回答。政府の積極的な景気刺激策やインド市場の持つ可能性への期待もあり、20年の景気は上向きと予測されています。

今回は、停滞の現状と2020年の見通しについて述べたいと思います。

 

月次:期間:20148月~20198月、GDPは四半期、前年同期比出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

出典:https://gentosha-go.com/articles/-/23577

金利について

インド準備銀行(中央銀行)は2019年10月4日に、政策金利であるRBIレポレートを5.40%から0.25%引き下げ年5.15%としました。利下げは5会合連続となります。

右グラフ:日次、期間:2017年10月7日~2019年10月7日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

出典:https://gentosha-go.com/articles/-/23577

 

個人消費の落ち込みとその背景

個人消費の落ち込み 2019年4〜6月(第1四半期)の民間最終消費支出は3.1%増にとどまりました。前年同期は7.3%増。自動車市場の販売不振は関連企業にも影響し、雇用への影響も見え始めた模様です。 自動車販売の落ち込み 個人消費の落ち込みは、そのまま国内の自動車(新車)販売の減少に影響。8月のインド国内の乗用車販売台数は前年同月比で31.6%減少しました。 新車・二輪車販売台数 インド自動車工業会(SIAM)によると、2019年10 月の国内新車販売台数(乗用車と商用車の 合計(出荷ベース)は、前年同月比 5.2%減の 35 万 1,800 台。12 カ月連続で前年同月の実績を下回りました。 国内二輪車販売台数(出荷ベース)は、前年同月比 14.4%減の 175 万 7,264 台。11 カ月連続で前年実績を下回る結果となり、2桁減だったものの、減少幅が2割を超えた前月より 7.7 ポイント縮小。 販売台数をカテゴリー別に見ると、全体の 64%を占めるモーターサイクルが 15.9%減、スクーターが 9.8%減となりました。

これら消費の落ち込み原因として、以下のことが挙げられます。

原因1:自賠責保険料の引き上げ

原因2:2020年度に実施される排ガス規制「バーラト・ステージ6」を背景とする買い控え。

原因3:農村部での個人消費抑制。 18年後半から19年前半にかけて発生したエルニーニョ現象の影響で、熱波や干ばつに見舞われ、水不足に。不作により農民の所得が減少し、農村部での個人消費が抑制される結果になりました。尚、雨季に入り現在、同リスクは低下しており、19年後半には回復する見込みです。

原因4:自動車ローンを扱うノンバンクの貸し渋り ノンバンクは自動二輪車金融、低利率の住宅ローン、金購入向けのローン、中古車金融などで大きなシェアを持ち、重要な役割を果たしています。格付け機関ICRAによると、インドでは近年、商用車(新車および中古車)の55─60%、乗用車の30%、二輪車の65%で、購入の際にノンバンクの融資が利用されています。 しかし2018年に大手ノンバンクのIL&FSがデフォルトに陥り、ノンバンク向け流動性がタイトに。ほぼ全てのノンバンクが新規借入を受けられなくなり、自動車ローンの貸し出し態度も厳格化という事態になりました。 これを受け政府は、7000億ルピー(約1兆621億円)を公営銀行へ投入するなど、様々な景気刺激策を打ち出しており、現在ノンバンク問題は落ち着いています

貿易赤字

インドは中国やアジア各国との貿易で大きな赤字を抱えている事も停滞の一因です。

2018年度の貿易赤字は過去最大の1,760億ドルになりました。 同国商工省の発表によると、2018年度(2018年4月~2019年3月)の貿易統計(速報値)で、輸出額は3,310億ドルで前年度比9.1%増、輸入額は5,074億ドルで前年度比9.0%増)。輸出額は2年連続で3,000億ドルを突破したものの、目標の3,500億ドルを達成できませんでした。

2019年4〜8月の輸出入統計によると、中国(香港含む)との間の貿易赤字は252億ド ルに上りますが、これらはスマートフォン・パソコン・家電やそれらの部品などの輸入増によるものです。 韓国との貿易では52億ドル、インドネシアは43億ドル、オーストラリア36億ドル、日本35億ドル、マレーシア19億ドル、シンガポール16億ドル、ベトナム15億ドル、タイ14億ドルと、アジア各国との貿易でインドは大きな赤字抱えています。 

2020年のインド経済は回復する見込み

このような経済の停滞にも関わらず、インドへの期待は大きく、継続してあります。

2019年8月 26 日から9月 24 日にかけて、20カ国・地域に進出する日系企業を対象としジェトロが実施した「2019 年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、前年と比較した場合の 20 年の営業利益見通しは、全体では「改善」が 42.1%、「横ばい」が 45.2%、「悪化」が 12.7%。一方でインドは「改善」が 53.4%、「横ばい」が 34.5%、「悪化」が 12.2%と、20 年に業績が上向くとする声が大きくありました。

出典:ジェトロ 「2019年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」 https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/962bd5486c455256/20190019.pdf

 

 

この大きな期待の背景には、インドに「3つのD」があるからと言われています。3つのDとは、インド市場の魅力を表す時にしばしば使われる言葉で、Democracy・Domestic demand・Demographicを意味します。

(1)Democracy(民主主義国) インドが世界最大の民主主義国家である事

(2)Domestic demand(内需) 中間層が台頭し消費活動が活発になっている事。インフラ需要の急増で内需が急成長している事。

(3)Demographic(人口動態) 人口13億人・平均年齢27歳・生産能力人口は2020年に86千万人に到達見込と、若い労働力により高い経済成長が続く事。

中国は「一人っ子政策」の影響もあり若年人口か急速に低下しており、高齢化社会を迎えると言われています。また、昨今、政治情勢も不安定です。一方、インドは民主主義国家であり、2025年の労働力率(労働力人口/15歳以上人口)90%を維持すると予測もあり、あらゆるマーケットの伸び代が大きいと期待されています。

政府の景気対策

インド政府は、景気の低迷を解決するため、2019年7月より様々な新しい景気刺激策を発表しています。

「法人税引下げ」  法人税を30%から 22%に引き下げることを発表。これは2019年4月に遡って適用されます。また、2023年3月までに生産開始すれば、新規設立の製造業の法人税率も15%に軽減されます。

「海外投資家の税負担の軽減」  海外投資を促進すべく、2019年度予算案で発表した海外投資家のキャピタルゲインに対する増税策の撤回が発表されました。

「公営銀行への公的資金投入」 18年、大手ノンバンクがデフォルトに陥り、自動車産業に大きな影響を与えました。そこでインド政府は2019年8月23日に、国営商業銀行に対し7000億ルピー(約1兆621億円)の資金注入を決定。これにより、貸し出し態度が軟化する事が期待されます。

「公用車の買い替え容認」 これまでは、老朽化した公用車の買い替えは禁止されており、レンタル車を利用していましたが、買い替えが認められます。

「車両登録料の延期」  車両の購入や更新時に必要な車両登録料の引き上げを2020年6月まで延期し、消費者の負担を軽減します。

ジェトロ・ニューデリー事務所の担当者によると、「好調だった 18 年の 反動で 19 年の見通しが厳しくなっている側面がある。インドの日系企業は、将来に対して悲観的になってはいない」という見解です。また、先に述べた様に政府も積極的に景気対策に乗り出しており、2020年の景気は上向きになると予測されています。

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