インド、キャッシュレス決済市場の急拡大
出展:経済産業省 「キャッシュレス決済を取り巻く環境の変化と本検討会で議論いただきたい点 」2020年6月10日
https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200612006/20200612006-4.pdf
近年、日本ではキャッシュレス決済市場は急速に拡大しており、2008年から2018年までの10年間で支払額比率は12.2%上昇しています。しかし、世界的に見てみると、日本のキャッシュレス決済の浸透率は約20パーセントと、主要各国の水準には程遠い状況です。
ではインドはどうでしょう。実はインドはほんの数年前までは日本以上に現金主義でしたが、2016年以降、オンライン決済の利用が3倍に増加。短期間で日本よりキャッシュレス化が一足先に進んだ状況となっています。
出典:The Times of India https://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/payment-apps-face-uphill-battle-to-turn-india-cashless/articleshow/70702800.cms
このインドのキャッシュレス決済の急拡大の背景には、2016年にモディ政権が高額紙幣の廃止した事があります。これは「期日内に高額紙幣を銀行に預けなければ、それらは無価値になる」という決定で、多くのインド国民が銀行に走るという騒動になりました。かねてインドでは偽造紙幣流通・不正取引への現金利用・脱税と言った問題を抱えており、効率的かつ安全なデジタル決済を普及させ、現金関連の犯罪を撲滅する事が急務となっていました。政府はキャッシュレス化促進のため、インド決済公社(National Payments Corporation of India)を設立。リアルタイムの銀行間支払いを可能にするシステム・UPIを開発しました。2017年にUPIが登場する以前は、Paytmなどのデジタルウォレットが圧倒的シェアを占めていましたが、お金をチャージするが必要無いUPIの方がより速く便利だと認知され、一気にシェアを拡大しました。 現在、UPI上で自社サービスを提供する企業は、Google Pay、WhatsApp、Paytm、フリップカートのPhonePeなど多数あり、激しい競争が繰り広げられています。その中でも特にWhatsAppはインドのユーザー数が4億人以上、スマートフォン保有者のほぼ全てがWhatsAppを使用すると言われる程シェアを伸ばしており、現在インドで最も勢いのあるアプリです。
キャッシュレス決済市場への投資
インドの急速なキャッシュレス市場の拡大には、高額紙幣廃止の他、国内外からの積極的な投資も大きく関与しています。 インドとよく比較される中国は、外資系企業に対して門戸を閉ざしていますが、インドでは国内外の中小企業と大手企業に均等な機会を提供しています。そのためIndia Fintech Report 2019によると、インドフィンテック業界における資金調達は、2018年だけで165件。合計約20億ドル(約2170億円)の資金を調達したとの報告がありました。中でもインド・バンガロールに拠点を置くフィンテックスタートアップRazorpay(レーザーペイ)は、創業6年ながらも2020年10月12日に新たな投資ラウンドで1億ドル(約106億円)を調達し、ユニコーン入りした事で注目を集めています。2020年は新型コロナウイルスにより世界的に資金調達が低迷しましたが、Razorpayがユニコーン入りは、キャッシュレス決済分野への大きな期待の表れとなりました。
インドでは少し前まではキャッシュレス決済は富裕層や外国人の利用が主でしたが、政府主導のキャッシュレス化政策・スマートフォン普及率の上昇・Eコマース市場・中間層の台頭や高い人口増加率などが後押しし、今後インドのキャッシュレス決済市場は更に大きく成長すると期待されています。
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