在日インド人ITエンジニア・連続インタビュー

[第三回]     Bさん

インド人ITエンジニアの方へのインタビューも三回目となりましたが、今回はBさんにお話を伺いました。Bさんは日本語堪能で、その語学力を生かし日印の橋渡し役をするブリッジエンジニアとして活躍されています。その経験と深い洞察力から、日本とインドを多角的な視点で分析されており、非常に興味深いインタビューとなりました。

いままでの経歴を教えてください。また、IT エンジニアになった理由を教えてください。

 

 

私はインドの南部バンガロール出身です。小さい頃から科学に興味があり、大学では工学とコンピューターサイエンスを専攻しました。2005年に大学卒業後、インドで就職しました。最初の会社は、インド人エンジニアに日本語を教え、日本で就労させる事に積極的でした。私も日本語のトレーニングを受け、日本語検定3級に合格したので来日し、日系メーカーのプロジェクトに参加する機会を得ました。そこでは、電気機器のテストエンジニアをしていました。その後は帰国し、インドのIT会社で日本語を活かしブリッジエンジニアとして働いてきました。これまで、日本の大手自動車メーカーやシステム会社などのプロジェクトに携わりました。ある会社ではアプリ開発を担当したのですが、ここでの経験は特に大きいものとなっています。こうした経験の中で、再び日本に行きたいと思う様になり、再度来日し日本のIT会社で働いています。

なぜ就職先として日本を選んだのか経緯を教えてください。

私の場合、最初の会社での研修や、その後のキャリアを通してずっと日本語を学んできた事が大きく影響していると思います。日本語を学ぶ事で、ビジネス上の習慣や、どんな事が日本人の心の在り方に影響しているかなど、日本を様々な観点から知る事ができました。学生時代はそれほど日本に興味があったわけではないのですが、就職した後、日本への興味がとても強くなりました。

日本に来る前の日本の印象を教えてください。

来日前は、日本の地理や一般的な事を知っているくらいで、特に日本に詳しいわけではありませんでした。 当時インドでは、おしん(NHKドラマ。戦中戦後の日本を逞しく生きた女性の一代記)が放送されていて、日本とインドは伝統文化に則った生活をしていて、社会が封建的である部分が似ているなと思っていました。でも、その印象は来日後にガラッと変わることとなりました。

日本の好きなところを教えてください。

日本の文化、例えば書道、盆栽、生け花、切り紙などが好きです。

日本で働くことについてインドの家族の反応を教えてください。

特に反対などされず、応援してくれました。私の家族は、「ちゃんとした仕事、自分の好きな仕事を持ちなさい。それができるのなら、日本でもどこででも働いてもいいよ」と言ってくれています。 家族は私がいつも日本語や日本の文化について勉強しているのを近くで見ていましたから、それが私の強みになる事を理解していました。実際、日本語スキルを磨いたおかげで、たくさんのチャンスを得る事が出来ました。

日本に来て、インドで考えていた日本のイメージと違ったことを教えてください。

先ほども述べた様に、インドにいた頃は「おしん」の影響もあって、日本はインドの様に、伝統文化や儀式を重んじた封建的な国だと思っていました。着物のイメージもありました。 けれど日本に来てみたら、そのイメージはガラッと変わりました。伝統は残っている一方で、日本人が現代的だったのでとても驚きました。伝統文化とテクノロジーが、日本ではどちらも発展していて素晴らしいです。 後は、地震が多いと思っていました。日本に住んでみて確かに地震は多いのですが、揺れても建物が壊れないというのは、やはり技術がすごいからだと思います。度重なる地震や戦争など困難に直面しながらも、戦後70年で日本は物凄く発展したのだなあと感じます。

インドと日本の文化的な違いについて教えてください。

インドと日本では仕事の取り組み方や、時間に対する考え方が違います。日本は時間厳守が原則なので、例えば納期や関連文書の提出期限などが厳しく、戸惑う事がありました。 元々インド人は、タスクを俯瞰して取り組む事が苦手で、最終的に結果がどうなるかとか、物事の「着地点」についてあまり深く考えません。文化的に、小さい頃からそうする様に育てられていないのです。

対して日本人は、着地点を常に意識しているので、きちんと準備とゴールセッティングしてタスクに臨みます。 文化が全く違うので色々ズレが起こってしまうのですが、この件に関しては、きちんとプランを立てる、タスクを分析するなど着地点を意識して取り組むなど工夫して解決できました。今では日本のやり方にもすっかり慣れましたが、日本で働いたことのある友人たちは、私がずっと日本で働いている事を知ると、私の適応力にびっくりしてくれます。確かに最初は大変でしたが、今ではこの経験は私の財産となっています。

 もう一つ相違点を挙げるとすれば、日本とインドでは、どんなタイプの職業人になるかという傾向が違います。例えば、日本人は幅広い知識と経験を持つジェネラリストになる傾向がありますが、インド人は専門知識を高めたスペシャリストを目指します。ですからインドでは、工学部に入ってコンピューターサイエンスを選び、ITエンジニアになるという進路が一般的です。一方、日本の場合、商学部や物理学部の人がIT会社に就職していますが、インドではあまりない事です。

 日印で違いはありますが、こういった日本人の特徴、つまり物事の終わりを見据え明確なビジョンを持つ姿勢や、ジェネラリストである事は、日本の物作りに良い影響を与えているのではないかと感じます。

例えば、現在のインドには様々な機能を搭載した車が作られていますが、日本メーカーが参入する前は、インドにその様な車はありませんでした。もちろん、インドでも車を作ってはいましたが、とてもシンプルな物でした。

ところが、日本メーカーが参入した事で、軽量化、燃費効率、静音性などの機能性や価値が加わり、インド人に受け入れられました。欧米からの輸入車も丈夫で機能的なのですが、日本メーカーほどインド人に寄り添った商品は作っていません。それはやはり、日本人が幅広い知識や経験を持つジェネラリストだからできる事なのではないでしょうか。インド人は、専門知識はありますが、その分、視野が狭くなる気がします。

日本とインドは色々違いますが、それだからこそ、お互いに良い影響を与えられますし、インド人の専門知識が日本の産業に生かされるのではないかと思います。そういった意味でも、日本のマーケットは面白いですね。

 

食事等、日常生活面で困っていることを教えてください。

困っていることは特にありません。日本に来て、生活は豊かになりましたし。私はベジタリアンですが、自炊したりお弁当を作ったりするので、食事で困ったことはありません。

将来のキャリアについて教えてください。

できれば定年まで日本で働きたいです。これからも日本の会社で働き続け成長していきたいのですが、起業も選択肢の一つかなとも思っています。もし起業するとしても、インドより日本の方がやりやすいので、日本がいいですね。何れにせよ、日本とインドの架け橋として活躍したいと思っています。

会社に改善して欲しいことはありますか。

もし、日本語や日本文化などを学びたいスタッフがいたら、そういう研修を充実させて欲しいと思います。 それと、社食では、ベジタリアン食などスタッフの文化的背景を考慮した食事を提供してほしいですね。全ての人が心地よく働くための配慮が必要だと思います。

インド人ITエンジニアに日本に来て働くことを進めますか。その理由も教えてください。

人それぞれだと思いますが、私の場合、国と国を結ぶ橋渡し役がしたかったので、日本を選んで良かったと思っています。私は小さいプロジェクトをやったり、プログラミングだけをしたりする仕事はしっくり来ませんでした。だから日本とインド双方の重要と供給を満たし、橋渡しするブリッジエンジニアという仕事は、私にぴったりだと感じています。

インド人エンジニアを受け入れるメリットはどういう所だと思いますか?

私は、インド人を受け入れる事は、日本の視野を広げる事にもつながるので、日本にも大きなメリットがあると思います。例えば、自動車メーカーのスズキは、トヨタやホンダのいる国内では勝ち目がないからとインド進出しましたが、結果、インドでトップメーカーの一つに成長しました。ですから人材確保の面でも、日本は海外に目を向けてみるといいと思います。

日本とインドに伝えたいことはありますか?

インド人と日本人が一緒に働く時は、最初の段階で相互理解を十分に深めておくことがとても重要だと思います。日本とインドは文化が違うので課題は出てくるとは思いますが、そうすれば、その後はスムーズに事が運びますよ。

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