世界に飛び出すインド人 ーインド人の留学事情ー

OECD、ユネスコ、米国国際教育研究所(IIE)等の2016(平成28)年統計によると日本人の海外留学者数はピーク時と比較すると減少しています。一方インドはと言うと、留学者数は増加しており、2016年のユネスコの調査によると、181,872のインド人が高等教育を求め留学し、若者の海外志向が顕著になっています。この背景には、中間層が台頭し子どもの教育に投資できるようになったこと、インド人が前向きで好奇心旺盛で、自身のスキルアップに意欲的であることなどが挙げられます。 

日本人留学生者数推移

出典:文部科学省報道発表 「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等につい

https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/__icsFiles/afieldfile/2019/01/18/1412692_1.pdf   

学位取得目的で留学するインド人の推移

インド人は海外で何を学ぶのか?

インド人学生に一番人気の国はアメリカです。19年11月18日、国際教育研究所(IIE)および米国国務省によって公表されたOpenDoors®2019によると、2018~19年には、1,095,299人(対前年比+0.05%)の留学生が米国の高等教育機関で学び、史上最高を記録しました。

専攻の内訳を見ると、留学生の51.6%がSTEM (科学、技術、工学、数学)分野を専攻しています。留学生がアメリカで一番多く学ぶ分野は工学であり、全留学生の21.1%を占めています。2018~19年には、数学およびコンピューターサイエンスを学ぶ留学生が9.4%増加、ビジネスマネジメント分野で学ぶ留学生を抜き、2番目になったことも、インド人学生が理数に強いという事が分かります。

人気の留学先と各国事情

アメリカ

アメリカは、インド人にとって一番人気の留学先です。グーグルのピチャイ氏、マイクロソフトのナデラ氏、アドビのナラヤン氏を始め、多くのインド人がアメリカのIT産業で活躍しており、インド人エンジニアにとってアメリカは憧れの国です。

また、2015年時点では、アメリカには240万人ものインド人移民がおり、メキシコ系に次ぎ二番目に大きな人種グループとなっています。近年は、IT技術者、科学者、医師などの高スキルのインド人材が多く海外移住しており、2011-2012年の間には1333人の医者がインドから海外へ移住。イェール大学によると、アメリカにおいて、インド系医師はコーカサス系(いわゆる白人)医師に次いで二番目に大きな人種グループとなり、アメリカの開業医の20人に1人がインド系と言われています。このように、インド人コミュニティの規模が大きく生活しやすいという事も人気の理由の1つです。

 しかしながら、トランプ政権の移民政策やビザ発行が厳格化している事への不安から、近年、アメリカ離れが見られるようになっており、米シンクタンクNational Foundation for American Policy(NFAP)が米国土安全保障省のデータを基に行った調査によれば、2017年に修士課程に在籍していたインドからの留学生数は、前年より1万8590人程度、21%の減となりました。アンケートによると、米国を避ける理由として、高額な授業料の他に「身体への安全への不安」や「外国人が歓迎されていない感覚」が多く挙げられていました。

2017年、2018年と2年連続で留学生数は減少となり、2017年の経済損失は約40億ドル(約4兆7660億円)と推計されています。このような社会状況もあり、近年、下記のグラフに見られるように、米国に代わりカナダやオーストラリアが人気シェアを伸ばしています。

 

オーストラリア

オーストラリアは近年インド人の中で人気が急上昇している国で、留学者数シェアを2000年7%から2016年15%と伸ばしています。

今やオーストラリアはアメリカに次いで二番目に人気の国となっており、Australian Financial Reviewによると、2018年2月までに留学者数は17パーセント増、現在約10万人のインド人が高等教育を受けていると言われています。

オーストラリアの教育産業省によると、輸出産業としての留学生受け入れによる経済効果は、2015年に約200億豪ドル(約1兆6,900億円)の規模。

これは石炭と鉄鉱石に次いで3番目に大きな国内経済への貢献となりました。オーストラリアに限らず、留学生受け入れは、国及び大学にとって大きな収入源となっています。

カナダ

カナダはもともと移民に寛容な国で、これまでに1500万人を受け入れ、今や国民の5人に1人が移民と言われています。移民の受け入れを担当するアーメッド・フッセン移民・難民・市民権相もソマリア移民で、移民が当たり前という環境です。

2006年には永住権への足がかりとなる卒業生用就労ビザPost-graduate Work Permitができた事もあってか、インド人の留学先のシェアは2000年1%から2016年7%に伸びています。

また、カナダ一の都市であるトロントにはインド人街があり、ヒンズー教もイスラム教も同じストリートに「カナダ国民」として共存しています。このように、インド人コミュニティが安定している点も人気の理由の1つでしょう。

イギリス

 イギリスは植民地時代からインド人とって伝統的な留学先です。 

キャメロン政権時には国内雇用を守るため留学生ビザが厳格化され、多くの不興を買っていましたが、2019年9月に留学生用就労ビザの発行を決定するなど、近年、状況が変化しています。このビザ制度により、2020~2021年度以降に学士課程以上の学位を取得し、審査に合格し優秀であると認められた留学生は、卒業後最長2年間、仕事を探し就職することが可能になります。

 統計によると、インドからイギリスに渡った生徒は、2018年度18,730人から2019年30,550人と11,820人の増。 英政府報告によると、2018年度の調査では、18,735人のインド人が学生ビザを取得(前年より33パーセントの増)。55,000人以上のインド人が高スキルを認められ、就労ビザを取得(前年2017年は2300人)。新ビザ政策への期待感から、今後イギリス人気が高まると予測されます。

中国

近年、中国もインド人の留学先として人気となっています。 人気の理由は、一年で約5万元(約7,000米ドル)という生活費と学費の安さにあります。 現在、認可を受けた45大学が外国人向け医学部コースを英語で提供しており、中国にいる23,000人のインド人のうち、21,000人が医学部で学んでいると言われています。

日本

 日本へ来るインド人留学生は、中韓東南アジア諸国からの留学者数と比較すれば少ないものの、外国人留学生在籍状況調査結果によると、平成25年度の560人から30年度は1,607人と、日本に留学するインド人は急増しています。

これまでは、日本とインドはお互いあまり馴染みのない国でした。しかし、長年、安倍政権はモディ首相と友好関係を築いており、モディ首相来日時には「インド人学生等に対するビザ緩和措置」が発表。これにより申請手続きが簡素化され、若年層の訪日者数増加等,日・インド間における人的交流の一層の活発化が期待されています。 

民間企業でもインド人採用する動きが活発になっており、ソニー、日立製作所、楽天、ヤフー、コニカミノルタ、村田製作所など大手企業が採用に乗り出しています。中でも2018年に、メルカリがインド人エンジニアを多数採用するニュースが話題になりました。この動きは地方や中小企業にも広がりつつあり、インド現地でのジョブフェア参加・インド人採用など、以前よりもインド人学生が日本でのキャリアパスを描きやすいようになっています。

写真右:メルカリ公式サイトより(https://mercan.mercari.com/articles/2018-04-26-163000/)

学術方面では東京大学がインドへの積極的にアプローチしています。同大学はデリーでインド事務所を開設し、日本へのインド人留学生の受け入れ促進や、インドにおける学界・産業界とのネットワーク 強化を通じた日印の学術交流、産学連携を推進を担っています。また同大学は、youtubeにインド人留学生の紹介動画をアップロードし、現地インド人へプロモーション活動を行なっています。 

英語堪能・高いITスキルを持つインド人は、官民両方から注目を集め、様々なアプローチがなされていますが、今後の日本を支える上で欠かせない人材になるでしょう。

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