在日インド人ITエンジニア・連続インタビュー

[第1回]  Aさん

近年、日本で生活しているインド人の数は年々増え続けており、東京都の統計によると、令和2年1月1日時点での都内在住のインド人は約1万3千人(平成30年:約1万1千人。令和元年:約1万2千人)となっています。出典:東京都 https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/gaikoku/2020/ga20010000.htm

これは国別人口数で言えば8位、米国に次ぐ順位です。日本社会の中で存在感が増しているインド人ですが、彼らが何を考え、何を感じているのか、まだまだ日本人が知らない部分が多いと思います。そこで今回は連続企画として、日本で働くインド人ITエンジニアの方々にインタビューさせていただきました。記念すべき第一回目は、インド最難関大学のインド工科大学を卒業し、東大の大学院で学ばれたAさんにお話を伺いました。みなさんを話を聞いてみると、「日本人の知らない日本」が見え、多くの発見があります。どうぞお楽しみください。

 

いままでの経歴を教えてください。また、IT engineerになった理由を教えてください。

私はインド工科大学(以下IIT)のハイデラバード校で、機械工学を学びました。ハイデラバード校は日本と縁が深くて、共同でキャンパスを作ったり、交換留学プログラムがあったりします。卒業後は、インド国防省傘下のDRDO(防衛研究開発機構)という機関で二年間働きました。DRDOは防衛システムを開発している所で、私はミサイル関係のシミュレーションや分析などを担当していました。その内に、もっと学びたいなと思いJICAの奨学金に応募し、東京大学工学部で二年間学ぶ事となりました。専攻は振動解析で、2016年9月に大学院を修了しました。

なぜ就職先として日本を選ばれたのですか?

まず留学に関しては、アメリカやカナダでは奨学金を得るのが難しいと言う理由があり日本を選びました。それと、やはり異文化体験がしてみたと思っていた事も挙げられます。2017年にサンフランシスコに行っのですが、どこにでもインド人の店があって驚きました。それだと「外国にいる!」と言う実感が湧きません。アメリカには叔父やいとこ達がいますが、彼らとは違う世界が見てみたかったのです。日本は言葉の心配はありましたが、文化もテクノロジーも素晴らしい。特にテクノロジーは世界一だし、日本の文化からは学ぶべきことがたくさんあると思ったのです。

大学院修了後も、確かに他の国で働くという選択肢もありましたが、日本人は親切で、大学院のみんなはよく助けてくれました。それに、日本はインドより安全で環境もいい。だから、そのまま残る事にしました。

日本での就職活動と就業環境について教えてください

日本で就職活動は難しかったですね。というのも東大ではみんな英語で話していたので、日本語が上達しなかったのです。私は専攻が機械工学だったのですが、これを生かせる職種だと、日本語能力N2以上の高い日本語スキルが求められます。プログラマーなどのITエンジニア職だったら日本語能力不問の所がけっこうあるのですけどね。日本語能力を問わない大手も幾つか受けたのですが、募集条件が博士号だったりして、残念ながらご縁がありませんでした。

 でもその後、幸いにも日本のベンチャー企業に採用されました。ここはスキルが高ければ日本語能力は問わないという会社だったのですが、社長がもっとグローバルな会社にしたいと思い外国人採用を始めたそうです。私と同時にロシア人が1人採用されたのですが、私たちが初めての外国人スタッフでした。いまでは、ブルガリアやロシアなど様々な国の人がいて、60%くらいが外国人です。働いてみて、文化が違うからこそ多角的な視野を持つ事ができ、ベストな答えを導き出せると思っています。

また、 この会社はとてもユニークで、上司と社員の距離が近くフレンドリーです。社長は情熱的で革新的な考えを持っていて、「自分は社員の夢を叶える手助けがしたい。それが自分の幸せだから」と言うのです。こんな会社、見たことがありません。

日本に来る前の日本の印象を教えてください。

日本人は勤勉で、仕事が終わるまで帰らない。12時間働く。忠誠心がある。正直であるという印象を持っていましたね。 それと、日本の物価は高いという印象をもっていました。物価は今でも高いと感じていることですね。

実際に来日してみて、どうでしたか?

思っていた以上に働き方はフレキシブルでしたね。うちの会社は、忙しい時は遅くまで働いている時もあるのですが、そうでない時は早く帰れます。 あと、金曜の夜なんかはスタッフみんなで飲み会があったりして、それがすごく楽しいです。

日本で働くことについてインドの家族の反応を教えてください。

当初は、母がものすごく反対していましたね。インドは親子の絆がとても深いので、「親戚が1人もいない日本で何かあったらどうするの?」と心配していました。でも、父がこれはチャンスだからと応援してくれて、今では母も応援してくれています。時差も3時間半なので毎日電話できますし、アメリカよりも近いですしね。

日本人とのコミュニケーションについて、上手く行っている部分と難しい部分を教えてください

今の会社で働き始めた最初の一年は、他の人と距離を感じていました。というのも、実は社長は英語が話せないのです。だからバイリンガルの人が通訳をしてくれるのですが、通訳には時間がかかります。最初は自分の言わんとする事が正確に伝わらない事もあったのですが、今は問題なくやっています。通訳する人がいなければグーグル翻訳を使って社長と話しますし、何より社長はとても辛抱強く耳を傾けてくれるので。

それと、日本人には「本音と建て前」があったり、遠回しの表現したりするので本心が分かりにくいと感じる事がありました。でも、関西の人にはそう思いませんでした。大阪で仕事をしていた時期があったのですが、関西の人は感情表現が豊かで話好きでした。そのおかげで私の日本語も上達しました。

 あとは、そうですね。日本人と接していて思う事は、日本人は英語を完璧に話そうと構えすぎているという事でしょうか。日本人は完璧じゃないからと恥ずかしがって英語を使わない傾向にありますが、ブロークンイングリッシュでも気にせずコミュニケーションしてみると良いと思います。

インドと日本の文化的な違いについて教えてください。

家族観がインドと全く違う事に驚きました。日本では核家族化が進んでいて、お年寄りは老人ホームに行きますが、インドでは考えられません。私は日本が大好きですが、いつかインドで起業しようと考えているのも、家族のためです。

食事等、日常生活面で困っていることを教えてください

東京のラッシュアワーですね。今はもう慣れましたが、最初は大変でした。

食事に関していえば、インド料理用のスパイスや野菜が手に入りにくかったり高かったりする事ですね。だからネット通販を利用したり、インドから持ってきたりしています。

あとはそうですね。私が外で日本語を使ったりすると、皆さん「日本語お上手ですね」と感心してくれます。でも、私は日本語がまだまだで全然うまいと思わないのです。だから、「なぜみんな感心するのだろう」と戸惑いを覚えたりもします。でも、日本人はこちらの片言の日本語やジェスチャーにも一生懸命に耳を傾けてくれますね。

将来のキャリアについて教えてください。

インドで起業して、新しくて革新的な物を開発したいですね。

実は既にこの計画は進行中で、数年以内に起業するつもりでいます。現在の会社の社長が2023年までに会社をユニコーン企業に成長させるという計画を立てていて、そのために独立子会社をインドで設立します。社長がエンジェル投資家となって出資して、私が新会社の株の51%を保有する予定です。この会社では、社員の夢が会社の目標とつながっていて、誰かの夢が新しい夢を生み出すという連鎖が起きているんですよ。

日本企業がインドIT人材を雇用するときに留意すべきことはありますか? 

すぐに日本に適応できる人ばかりではないので、半年から一年程度は見守ってほしいですね。働く側も会社側も、辛抱強く、お互い協力できたらいいですね。

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